裏紙

書いたり消したり

備忘録

2018年3月11日追記

デマを作成しその後訂正に回った本人のアカウントが規制されたようだ。

問題があるツイートがあれば当然通報される。同一アカウントで訂正しても、アカウントが規制されてしまえば訂正情報は見えなくなる。

これを解決する方法は外部での情報保全しかない。

 

 

 9月の終わりごろにtwitter上で嘘の内容で他人を中傷した人に偶然関わり、訂正と謝罪までの支援をした。何度もあることではないと思うので時系列を記録しておく。このような小火は毎日のように発生しているが、もし身近で起きた場合発信者をいくらか支援することがデマの影響をより小さくできるのではないか。

 

 twitter上でデマを流してしまった場合、他のSNSに出ていない段階なら、信じてしまった人のところにそれぞれ個別に訂正と謝罪、デマ転載の取り下げを頼むことが単に訂正情報を流すよりも効果を上げやすいと思われる。「訂正して回る軽率すぎた作成者」は「あの話は嘘だった」よりも記憶に残りやすい。

 しかし、この手法で追えるのは目の届く範囲のデマに対してだけであり、デマを見かけた人の曖昧な記憶から形成された印象などに対しては効果がない。発生から一ヶ月経過して、デマ自体を覚えている人は非常に少ない。一度デマが流れると、訂正が届かず必ず悪影響が残る。情報の発信はくれぐれも慎重に。

 

 

  

■9月28日夜:画像投稿とツイート削除

 ある俳優がアイドルと共演するというリークがあり、それが印象的なキスシーンのある海外映画のリメイクあるということでアイドルファンが荒れていた。そんな中あるアイドルファンが俳優がアイドルファンを煽ったように見せかけた偽ツイート画像を作り、作成者の認識ではネタとしてツイートした。

 しかし画像は作成者の意図を超えてデマとして拡散した。作成者は投稿ツイートを削除したが、多くのアイドルファンの間で「拾い画」として残った。

 私が気づいた段階で、偽ツイート画像は既に「拾い画」として再拡散されており、俳優ファンが訂正をツイートしている状況だった。また、作成者に対して攻撃的な態度の俳優ファンもいた。

 

◆この時点での炎上可能性について

 この偽ツイート画像は28日夜時点で炎上につながる可能性があった。偽であるという証拠に乏しいことと、対立的な立場から訂正が行われていたためである。炎上は一時的に事象の認知度を上げるが、炎上させる側に反感を持たれた場合、訂正情報そのものが疑われてしまう。証拠が乏しい段階での炎上は訂正側にとって不利に働く。

 作成者が投稿したという証拠はスクショしかなかった。しかも投下ツイートは作成者が撮ったのか作ったのか判別できない。最もそれらしい証拠は元ツイートにリプライでぶら下がっているやりとりで、「作ったに決まってるだろ」と作成者が発言しているもの。

 作成者の属性も燃料になりそうだった。作成者が好きなアイドルグループはメジャーだが、他のアイドルファンとの叩き合いが発生しうる。◯◯ヲタが捏造中傷!と対立煽りに使われると、グループファンの反発を招く。

 さらに厄介なことに作成者が話題のアイドルのファンとして叩かれると、それもやや違う。彼の推しは違うメンバーで、話題になったから作っただけだ。対象を厳密に指定して批判しないと、巻き込まれたと反発される。動機をファン心理と誤解するとファンを貶めているように受け取られる。

  炎上で野次馬を寄せたくなかったのは、単独で真偽判定しにくい画像だったという理由もある。決定的なのは中点の欠けくらいで、解像度が下がると見えなくなる。後からわかったことだが、当初指摘された自動改行については偽造ミスではなかった。

 

■9月28日深夜から29日の日中:作成者と接触するまで

 当然ながら、私は作成者と全く関わりがなかった。しかし最近その俳優贔屓になっていたため、できるだけの訂正はしようと考えた。また、最近は炎上させる側に対する目も厳しいことから、俳優ファンが作成者を炎上させるという事態にもならなければいいと感じた。

 証拠の保全状況が不明であったため、いくつかのツイートを保存した。また、作成者がスクリーンネームを変更して追えなくなることを考え、内部IDを確認した。

 作成者は夜のうちにアカウントに鍵をかけ、スクリーンネームを変更したが、昼には鍵を開けた。

 

■9月29日夕方:作成者からの接触

 作成者が鍵を開けたため、私は訂正リプライを送る際に作成者の自作発言を引用したところ、作成者はそのツイートを消した。その後自作発言のスクショを使用していると、作成者からDMが入り、反省していると伝えられた。

 偶然にも接触を得たので、自分の方針を「証拠を確保する」「手の届く範囲での訂正」「作成者の炎上回避」の順で定めた。

 

 ◆作成者は自力だけで対応すべきか

 作成者が対処を自分で考えるべきだと思う人も多いようだが、私はせっかく反省を見せた彼がうまく対処できず逃げ出し、嘘だけが残ることを心配したため、情報の訂正を優先した。2人で考えても、例えば元となった画像の提示に思い至るまで2日かかった、訂正ツイートの不備を指摘されるなど、やはり対応を考える上での助言は必要だと実感した。

 私は訂正手段を助言はしたが、作成者は反省を動機にそれを取り入れ実行した。言われたからではなく、反省に基づいて行動している。

 

■29日夜:作成者による訂正と今後の対応相談

 作成者に対し、すぐできることとして誤解している人に対して直接訂正して回ることを勧めた。作成者の行動は証拠としても有力である。また、偽ツイートは多くの人の目にとまり印象と記憶のみが残っている。こういった曖昧な記憶に対する訂正情報は目に止まらない。「嘘が思いがけず拡散して訂正して回っている作成者」がファン界隈で目撃されることを狙った。また、誤解しているツイート探しを手伝った。

 先の見えない訂正にあたって、作成者には偽情報が拡散しやすいタイミングの予測をあらかじめ示した。この時点では高校生らしきアカウントを中心にLINEで回っていることを確認していたため、学校休みである30日土曜、多数のエキストラ参加後のリーク、公式発表と予測していた。

 

■30日:撮影情報が話題になり、画像が再拡散する

 訂正により再拡散は比較的抑えられ、ツイートについてのまとめが一度作られたが訂正コメントがあり消去された。しかし夕方になって撮影情報が画像付きで漏洩し、大きく話題になった。この時点で共演情報のまとめが多数作られた。新たに知る人が増えることで、デマの再拡散もみられるようになった。

 再拡散に対し、個別訂正に加えわかりやすい訂正ツイートの作成を検討した。作成者から手法を聞き取ったところ、文字差し替えではなく素材用ツイート(削除済み)にアイコンとIDを被せていることがわかったため、元ツイートの画像を訂正に使用することを作成者に提案した。
 また、元画像の真偽自体が疑われた時のため、元画像のexifデータに記載された時刻を証拠として示せると考えたが、各種サービスでは削除されるため提示を断念した。
この段階ではどの程度炎上するのか不明だったが、念のため部外者からも画像のみで客観的に偽とわかる資料を用意することにした。作成者はtwitterアカウントしか持っておらず、凍結されると訂正情報自体が不可視化されるおそれがあったため、預かった画像と聞き取り内容から訂正記事を作成、公開した。

 訂正ツイートは作成者の友人や俳優ファンによるRTのほか、訂正リプライを受けた人にRT協力してもらうなどして拡散された。

 俳優ファンからも作成者や内容への直接の言及をしない形で「情報解禁前作品について捏造ツイートが拡散されている」という注意喚起があった。

 また、作成者の謝罪に関して友人から情報を得て助言した。

 

■10月3日:公式発表へのリプライ

 10月3日朝公式発表があり、俳優の告知ツイートへのアイドルファンからのリプライが多数ついた。その中に偽ツイート画像を提示したものもあった。

 作成者は訂正リプライをつけるほか、自分の訂正ツイートを俳優とアイドルの名前をつけ引用RTすることで訂正情報の拡散を図った。

 

■10月4日:俳優へのアイドルファンの態度が問題になるも、画像は問題にならず

 俳優の告知ツイートに対するアイドルファンのリプライ内容に対して、アイドルファン側から否定的な意見が多くツイートされ、また否定的な視点でのまとめ記事が多数作られた。

 この時点で画像に関して話題にならず、また「コラ画像を作った悪質なファン」という視点でも話題にならなかった。

 3日以降画像を掲載したツイート自体は見つけられていないが、「以前ツイート見たけど」など誤解に基づくツイートはあった。(そのツイートには俳優ファンからの訂正があった)

 

■10月5日以降

 エキストラからの漏洩やメディアでの取り上げ、ポスタービジュアル発表など画像が取り沙汰されそうなタイミングに注意するよう作成者に伝えた。

 

■補足として

 作成者に聞いてわかったことだが、偽ツイートにはファンの間でも迷惑行為と見なされているコールのネタが入っており、そのこともアイドルファンから見た信憑性を下げていたと思われる。また、アイドルファンから俳優へのリプライでもそのコールネタが使用されたものがあるが、この画像を前提としたものなのかは判別がつかない。しかしコールという情報を共有せずデマだけ知っている人から見れば、デマ由来と誤解されかねない。デマはこのような誤解の種も残した。

 そのほか助言したこととしてはリプライや通知に関する仕様上のこと、カメラロールから削除していた画像データの復元など。

 当blog上の訂正記事は作成者のアカウントに何か起こった場合の予備と、炎上に至ってしまった場合の参照先として作成した。

 

■作成者支援について

作成者に擁護の余地はないが、反省し訂正に取り組んだ。作成者が自分から行動を起こし私に声をかけたことから、彼が本当に反省していると感じ支援することにした。

 

■所感

 アイドルが自分のツイートを見ることや、見てどう感じるかを想像しないファンは多い。このようなファンにとってアイドルは人格を持った個人ではなくいくらでもネタにしていいコンテンツである。今回作成者はその認識のまま共演俳優に対しても同じようにネタにしたが、俳優ファンは俳優を個人として扱う人の割合が多かったため、ネタであるという建前が通用しなかった。今回の件でアイドル本人やグループ、そのファンというよりも、ファンにコンテンツとして扱われるアイドルという売り方そのものに良い印象を持てなくなったのが正直なところだ。

 また、加害が裁かれることと被害が回復されることは別の問題だ。この件に限らず、デマ事件が起こると裁くことのボランティアは多数現れるが被害回復のボランティアは少ない。デマ事件に触れる際は「加害者」の問題と「被害」「被害者」「不快に感じた自分」それぞれの問題を混同しないよう、自分が今何に言及しようとしているのか考えるべきだ。