裏紙

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特発性過眠症の話

 3年前に特発性過眠症と診断され、モディオダールの処方を受けて症状が劇的に改善した。

 成人してからの最もひどい睡眠エピソードは入社試験の筆記で寝て試験官が様子を見に来たことだと思う。治療前は1時間を超える筆記試験は途中で必ず眠くなってパフォーマンスが落ちるので、どこかで意識を落とす習慣がついていた。試験で寝ながらも今の職場に滑り込めたおかげで、産業医睡眠障害の可能性を指摘されて専門病院を教えてもらい、MLST検査を受けて高い薬を保険適用で服用できている。

 

 さて劇的に改善しながらも、内心「特発性過眠症」という現実は受け入れ難かった。学生時代からメンタルを崩しがちで、今から考えると眠気によるQOL低下も原因だったのだろうが、自分はうつ病だと思っていたのだ。うつ病は適切な治療を受ければ治る。そして薬の補助がなくても気力充実して人並みに動けるようになると思っていた。中学生の頃から眠かったのでそんな人並みは想像でしかないのだが。しかしこれは原因が分からないから「特発性」で、これから治る見込みがない。
 自分が病気を受け入れていないと理解したのはごく最近、情報収集に腰が重いことに気づいてからだ。重大な問題なのに最初に少し調べた後3年も無視していたのは、やはり問題にフタをしていたからだろう。病と薬に関して知ることは受け入れるために必要なことだ。ということでちゃんと情報には追いついていこうと思う。

 

 自分の処方状況は、朝にモディオダール100mgを1錠。
副作用は服用を始めた当初に頭痛と口の渇きが少しあったが今は無い。頭痛には慣れただけかもしれない。
 日中の眠気以外に効果として感じているのは、まず睡眠サイクルが出来上がったこと。夜の入眠が早いのは変わらないが、比較的朝の目覚めが良くなった。休日でも昼まで意識が無いようなことはない。前日朝飲んだモディオダールはとっくに切れているはずなのに、朝起きられるのは不思議だ。あと夢を全くと言っていいほど見なくなった。この3年で5回くらいしか記憶にない。主治医によると、レム睡眠が改善しているのではということだった。
 また、薬が切れたからといってすぐに眠くなるわけではないようだ。昼寝していなくてもレイトショーの映画を観に行ける。
 もちろん車の運転も安全になった。診断を受けるまでは良く路肩に停めて寝ていた。ナルコレプシーのように急に落ちるわけではないので薬さえあれば毎日の運転も問題ない。ただ、単に疲れやすいから眠くなるのだと思っていた方が気楽だった。

 

 3年ぶりに検索したところ、ナルコレプシーではなく特発性過眠症モディオダールの処方を受けた人の声が増えていた。200mgで効果が薄い人もいれば、副作用が厳しい人もいる。個人的に気になっている頭の働き方について書いている人はあまりいない。
モディオダール特発性過眠症に適用拡大する動きもあるようで、これは絶対にお願いしたいことだ。
 薬の作用に関してのわかりやすい日本語資料は増えていなかった。眠気の仕組みもそうだが、あと何十年も服用する(かもしれない)薬の仕組みがわからないのは不安だ。書籍に関して、2016年に「極論で語る睡眠医学」といういい本が出ているようだ。ただし電子書籍版はkindleではなく専門書分野のビューワーのようで悩む。

 

 今日は月に一度診察を受けて30日分の処方を受ける日だったので病気のことを考えた。3年間毎月毎月特に変わりはないです、と報告するだけだったが、ひょっとしたら病気と薬についての状況は変わっているかもしれない。いいことでも悪いことでも、眠気と付き合っていくためには知っていかないといけない。

 

追記:メンタルの不調はモディオダールを服用し始めると腹が立つほどあっさり治った。QOLの改善となぜ人並みにできないんだという悩みが解消しただけならいいのだが、薬が精神に作用しているのならその仕組みを知りたい。